東京タワー ボクとオカンと時々オトン
久々に本を読んだ。先週、仲のよい同期の女の子と飲んだときに教えてもらった本だ。リリー・フランキー「東京タワー ボクとオカンと時々オトン」。リリー・フランキーってどんな人だろうか?たまにテレビで見るけど・・・。よく分からず、読んだ。とても泣けた。「ボクのために人生を生きてくれた人」この一文が心に沁みた。死んだ祖父のことを思い出した。金は使うな、贅沢はするな。外食なんてもったいない。根からの商売人だった祖父の口癖だった。酒もタバコもギャンブルもしない。服は着れればいい、車は乗れればいい。食い物は、家で食うのが一番。飾らず、威張らず、ただ、花を育てることをこよなく愛した。そして、人には親切だった。商売人といっても儲けは抜きで、人と人との関わりを楽しんでいるようだった。口数が少ない祖父だったが、そんな商売の仕方をしていた。そして、いつも毅然としていた。辛かろうが、痛かろうが、顔や雰囲気には一切出さなかった。もっと贅沢をしてもいいのに。自分のために金を使ったらいいのに。いつも、そう思っていた。そして、息子たちが世話をかけた。高級車に乗り、酒を飲み、ギャンブルをして、客を大切には扱わなかった。いつも、自分のペーストと考えで行動した。バブルの後は、斜陽だった。人には言えない思いをした。今無事に生きていることが不思議だと思う。今から、5年前。本当に辛かった。車で一夜を明かすこともたびたびあった。友達の家に泊めてもらった。大きな決断をしたあと、息子たちは身を隠した。そして、祖父たちはそこに残された。矢面に祖父が立っていた。なんとか、その場から逃がさなければと何度、も思ったが、自分の身がかわいくて、怖くてできなかった。電話が鳴り響き、望まない訪問者がおとずれ、まくし立てる。もう、70歳を超えていた。おそらく精神的に限界がきていたことと思う。それでも、そこで踏ん張ってくれた。もちろん、祖父はなんの贅沢もせずにつましく生きてきた。一生懸命に働いた。そして、ある日、背負わなくてもいいものを背負った。やさしさがあだになってしまった。もっとも、辛い時期から少しして、祖母がなくなった。混沌としたあの時期、祖父に寄り添うようにしていた祖母は疲れたはていたのだろう、家を失い、友を失い、親類を失い長い人生で手に入れたものをすべて失った。「妙に気分が悪い、先に寝るきね」それが最後の言葉だったいう。二度と目覚めることはなかった。長年の連れ添いを失ったショックは大きかった。一日中仏壇を眺めた。あの気丈だった祖父が一回りもふた周りも小さく見えた。「会いたい、会いたい」と言ってくれながら死んだ祖母に会わずにいた俺。なにもできなかった。祖父にはいっぱい会いに行こう、そう決めて葬式後の祖父たちの家を後にした。しかし、結局、3日坊主で終わった。恩知らずの、バカな孫だった。母が、元気付けるために二人で自転車で美術館までコーヒーを飲みに言ったそうだ。「こんな気持ちのいいところがあるとはじらざった。コーヒーもおいしいねぇ。ええところをしっちゅうねぇ」祖父はこういったという。50年来市場と店の往復。外で、コーヒーは市場の片隅の喫茶店。たまの日曜日に祖母と出かけるホームセンター。それが、永らくの祖父の世界だった。こんなに一生懸命働いてなんでもっと贅沢をしないのか。自分で汗水たらして稼いだ金だからもっと自由にすればいいのに。しかし、祖父はそのすべてを息子に与え、それは不景気に吸い取られていった。そして、祖父はガンをわずらった。「手術はえい、痛とうないようにしてくれ」それが、祖父の言葉だったという。そして、妻と見舞いに行った。部屋に入ると、餡とも言えないにおいが立ち込めていた。肉の腐るにおい。消臭剤をいくつおいてもそれは消えることはないという。やせ衰えた体のせいで目だけが異様に大きく見えた。昔の面影はそこにはなかった。多量のモルヒネのせいで、現実と夢の境がなくなっていたようだ。俺を見ても分からなかった。喉からは腫瘍が飛び出していた。目を覆いたくなるような光景だった。ここまできても、また、何もしてやれなかった。バカな孫がいた。痛みに戦う祖父の手さえ握れなかった。あんなに懸命にひたむきに生きた人がどうして、こんな思いをしなければいけいないのか。努力をしたものが報われる世の中じゃないのか。なんで、なんで、なんで!おじいちゃん、もっと贅沢して好き放題したらよかったのに。人のために生きて何が楽しいがで。祖父が死んだとき、そんなこと思い、涙が止まらなかった。東京タワーを読んでいると、そんなことを思い出した。あんな生き方は絶対まねできない。見栄っ張りで小市民な俺には。ただ、努力したものが報われる世の中をつくるための何かはできるのではないかと思っている。一生懸命にやったものが報われるそんな世の中に俺たちはしていかなければならない。
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